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睦月 夢幻 画家

last update Last Updated: 2025-05-20 17:38:00

泣いてばかりのあたしがいる。

ポロポロ毀れる涙はまだ汚くない、僕。

君もポロポロ泣いている。

似た者同士の僕と君。

背負うものも似ていて、心の傷跡も全て一致している。

まるでドッペルゲンガー。

君は呟く。

お互いの為に離れたほうがいいと。

僕は震えながら、頷く事しか出来ない。

『歌手』としての君の人生を守りたい。

でも、名前変えないでほしかった。

「また会える。ここまでおいで睦月」

「僕には才能なんかない。無理だよ」

「睦月のせいじゃない。私も弱いの」

「分かってるよ。僕と君は似ているから」

感性も、考え方も、そしてお互いを傷つけたくないと言う気持ちも。

離れようとする所も、好きな歌手も、小説も、写真も、全て全て。

僕の好きなものは君も好きになる。

君の愛しているものも僕は愛する。

不思議だね。不思議だね。

だからこそ、お互い傷つく、苦しめる、そして涙する。

「離れたくないんだ。僕は…だけど」

「夢を追うの私は」

「「色々なものを犠牲にしてきたから」」

君は僕に囁く。

どんだけ離れても、例え歩む道が違くても、心、繋がってる。

睦月の絵具を描いて?

私も心の絵具を音にする。

応援している、だから睦月も…。

私達はずっと友達、離れる事になろうとも。

親友なんて言葉は嫌なの。

睦月とは心で繋がっている。だから、ね。

『心友』

心の友達。大切な友達。

「待っているよ」

「いつかきっと、一緒に…」

「「さようなら」」

もう10年以上経った、僕は小説を書いている。

『骨の瓦礫』

登場人物の『ゆち』は君がモデル。

『壊命』

僕の過去作。そしてこの原本は君と僕が持っている。

君はあの時言った。

素敵な世界を創れる。

創造。

個展したいね、いつか。

僕は夢を叶えて、君に会いに行きたい。

それは我儘かな?

2

聴きたくない、もう聴きたくない。

両耳を抑えながらあたしは受け止める事が出来ない。

離れていった貴方は何処に行ったの?

手を伸ばしても、届かない。

先は暗闇、光がどんどん消えていく。

「いやだ」

泣きながら、追いかけるあたしがいる。

愛情なんて分からない、何がしたいのか分からない。

ただ貴方と一緒にいる事が当たり前であたしの安定剤。

「目を開けて」

ポロポロ毀れるのは涙なんてものじゃない。

貴方が息をしなくなった。

最初は「冗談だよね」なんて呟きながら現実を直視出来ずにいた。

「やだやだ」

ねぇ起きて、お願いだから。もう一度だけでいいから

笑ってよ……。

「あ」

「ああ」

「あああああ」

「いやああああああああああ」

支えが消えたあたしは壊れ物。取り扱い注意の危険物。

あれから何週間が経っただろう。不思議なの。

生きている感覚がしない。あたしは呼吸をしているの?

視界から色が消えたの。

どうして、どうして、どうして。

あたしは決めたの。永遠に続く夢の中の住人になると。

そうすれば貴方に会えるから。

また笑ってくれる。

抱き合いながら、貴方の膝の上で微笑んでいるあたしがいたの。

とても、とても、幸せな『夢』

空が輝いているよ。

雨が降っているはずなのに、キラキラしてるように見える。

「会いたかった」

満面の笑みで微笑むあたしがそこにいた。

3

私は絵を描きたかった。

この夢は叶うと信じていた。

子供の頃から、ずっと『先生』の傍にいたから。

私も画家になれると信じていた。

懐かしむ母の言葉を聴きながら、語りは始まる。

手が描けた。髪が描けた。瞳が描けた。

とても嬉しくて、今日は果物が描けた。

凄く愛おしくて、時代に逆らってでも叶えたかった。

悲しそうに呟く母の瞳にポタリと涙が毀れた。

時代の流れで、私はチャンスを失った。

そして自分の人生も失った。

脆い私、壊れた私。それでも、それでも。

「信じていたのよ。貴女のお父さんの愛を」

ずっとずっと私は貴方しか『愛さない』

描けなくなった私は、もう画家にはなれない。

それでも、それでも。

想いと共に描けたらいいのにと願うのよね。

母は微笑む。

そして壊れながら、夢へと進んでいく。

「娘の貴女に託す想い。貴女はあの人にそっくりね。得に優しすぎる所が」

ふふふ、と口では笑い、瞳は戻りたいと訴えかけている。

「ねぇ嘉穂。今度は貴女が先生になってね?」

「へ?」

「私達親の夢を叶えて。そして私の愛を語り続けて頂戴」

「なんで……あたしが」

「もうお母さんはね。元には戻らないの。先生に言われたでしょう?」

「……」

「だから母でいられる時間が殆どないの。この数分保っているのが不思議なのよ」

「今日は安定しているよね」

「こうやって昔話なんかして、どうしたのかしらね…私は」

仕方ないなぁ。とあたしは呟きながら、母の頭を撫でて、呟く。

父の面影があると言うのなら。同じ言葉を呟いて『安心』させればいい。

「「大丈夫だよ。僕が傍にいるから。安心して眠りなさい」」

「黍《キビ》さん……ああああああ」

会いたかった、会いたかったと泣き続けて、あたしの膝の上で子供に戻っている。

膝枕。

父の代わりにした。

「「子供だなぁ」」

あたしは父のしぐさを思い出しながら、演じる。

「「おやすみ」」

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